本書では歴史の古いヨーロッパのフットボールクラブを
「常勝」「“ザ哲学”」「港町」「ライバル」「成金」「小さな街の大きな」「名将」の7つのカテゴリーに分け、
それぞれのフィロソフィーがどうなっているのか見てみようと試みた。
例えばマンチェスター・ユナイテッドは「ミュンヘンの悲劇」によって、
「何があっても前進する」精神性を身に付けている。
レアル・マドリーはアルフレッド・ディ・ステファノの補強が大成功し、
「計画できないところは選手が補ってくれる」ことを現在も具現化している。
バルセロナはまさに哲学と呼ぶに相応しいものを持っているが、
負ける時は負けるべしくて負け、ユナイテッド、レアルのように奇跡を起こすことがあまりない……。
それぞれのクラブにはやはりDNA(遺伝子)があり、“香り”がある。
ヨーロッパの厳選20クラブの哲学を知れば、現在のフットボールシーンをより楽しむことができるはずだ。
まえがき
クラブ年表
クラブ相関図
「常勝クラブ」の哲学
Ⅰレアル・マドリー 強い奴を集めてとにかく勝つこと
全方位型のじゃんけん王者
ディ・ステファノという具体的規範
スターコレクションからの銀河系
個が戦術不足を補えばいいじゃないか
Ⅱユヴェントス まとまりすぎの安全第一主義
“ザ・シルヴァーコレクター”
機能性がアズーリと瓜二つ
リッピの強靭なフィジカル志向
まとまりの良さが生むジレンマ
Ⅲバイエルン・ミュンヘン 精神的支柱は皇帝の激怒
1860ミュンヘンの平手打ち
ゴールは中央にある
節目節目の皇帝の癇癪
健全経営の「レアル・マドリー」
「“ザ哲学クラブ”」の哲学
Ⅰバルセロナ 永久に問う「クライフ原理主義」と「メッシシステム」の共存
「クラブ以上の存在」という明確な役割
「4番」→「6番」→「9番」の新縦軸
「ラファエロの弟子」のルネサンス
皮肉なMSNの大艦巨砲主義
「メッシシステム」の呪縛
Ⅱアスレティック・ビルバオ ビッグクラブが失った「幸福」を追い求める
力自慢がもてはやされる地域性
オールバスク人の属地主義
ビエルサが描いた「ナスカの地上絵」
忠誠心と犠牲心と少しの笑い
「港町クラブ」の哲学
Ⅰリヴァプール 特権階級を作らない平等なハードワークの流儀
「第二のユナイテッド」に反する強化方針
秩序の破壊とカオスの導入
「乱戦上等」だけではないしたたかさ
精神的な社会主義者
Ⅱナポリ 神の子をも巻き込む情熱と反逆
デカい声と絶倫顔のナポリタン
世紀の大天才も吸い込まれる情熱
ボロ雑巾的反逆思想
分断と逃亡を飲み込むなにくそ魂
Ⅲマルセイユ Droit Au But――ゴールへ真っ直ぐ
直接的な“パンの雨”
豪腕会長のマフィア色注入
黒い噂にDroit Au But
短期集中型によるカリスマ乱用
「ライバルクラブ」の哲学
Ⅰインテル×ミラン 革新性溢れるアンチテーゼVS伝統を重んじるコスモポリタン
「門戸を開きたい」か「開きたくない」か
閂で繋がっていた青黒と赤黒
“属人的”へのアンチテーゼ
面白くないコスモポリタン
Ⅱベンフィカ×ポルト 似た者同士の名将が形成した「豪快な攻撃力」と「堅実無比」
「知識」と「日用品」2つのバッグ
開花→売却の“ポルトモデル”
解けないグットマンの呪い
酷似監督が植え付けた盾と矛
「成金クラブ」の哲学
Ⅰマンチェスター・シティ 先進性と理詰めのアプローチで水色の細い糸をつなぐ
憎きユナイテッドと共同作業
サポーターの異常なまでの屈折
今やエビのサンドイッチを食べるのに夢中
トータルフットボールの聖火リレー
ⅡパリSG 中身は薄っぺらくとも外見だけは華やかに
花の都のやさぐれ
パリ市のサンジェルマン外し
良いクラブは金で買える
華やかなパリ向きのカナリア色
「小さな街の大きなクラブ」の哲学
Ⅰボルシア・ドルトムント×ボルシアMG ドイツフスバルを体現する秩序と混沌の両立
権威に対する「反骨心」
一糸まとわぬ姿の自由主義
秩序と自由の二面性の許容
シームレスなフットボール
Ⅱヴィジャレアル 黄色いタイルを盗まれても新たな黄色いタイルを作ればいい
小さい街=貧乏の大ウソ
タイル工場のような育成システム
Ⅲモナコ 空虚な黄金時代というルーチンを繰り返す
タックス・ヘイヴンによる大物釣り
それでも空虚な努力を繰り返す
「名将クラブ」の哲学
Ⅰマンチェスター。ユナイテッド 「赤いバス」は何があっても走り続けなければいけない
悲劇と奇跡が形成した選民意識
マグニフィセント7の系譜
戦後に生まれた「バスビー憲法」
ファギーの「赤いバス」
Ⅱアーセナル ヴェンゲルの麻酔が切れても「勝利は調和から」は普遍
退屈な「フェイマス4」のブツ切り
先鞭をつけたヴェンゲルの青田買い
英国の戦闘的伝統を残したインヴィンシブルズ
いよいよ切れたヴェンゲルの麻酔
あとがき